奥様のお仕事
「まだ思い出してもらえないかしら」


「え?あの やっぱりどこかでお会いしてますよね」


「去年の冬 うちの旅館泊まったわよね。
とても素敵なご主人と一緒だったわ」


「あ!!!女将さん!?」


あの旅館の女将とやっと 一致した。


「感じが全然違うから・・・・でもどこかでって
ずっとおもってたんですけど」


「あなたが面接に来たとき私ちょうどいたのよ。
支配人がどうしましょうと見せに来たとき驚いたわ」


「そうだったんですか
どうして急に採用してもらったんだろうって・・・・
女将さんが オーナーだったんですか・・・・・」


「あの時とても幸せそうだったのに」


「私のわがままなんです
でも・・・・もしかして私のこと彼に話ましたか?」


「もちろんよ」


今までの頑張りが 音を立てて崩れた。


「そんな・・・・彼から遠く離れたかったのに・・・・」


「そんなこともう言ってられないわ
彼もすごくすごく耐えていた あなたをすぐにでも
連れ戻したかったのに・・・気持ちを尊重したいって」


結局 浩一郎の手の中にいたんだ 私
とんだ茶番だ・・・・・・・・。



「もう 意地をはってないで
会いにいきなさい ちゃんと話しなさい」

女将のキツい声が 会議室に響いた。
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