奥様のお仕事
タクシーの中でも私は涙が止まらなかった。


ずっと押し殺してきた想いが爆発した。
浩一郎を失うのは絶対にイヤだと・・・・・。


会いたい
会いたい

浩一郎が 思い通り 五月さんと幸せになっていたら
笑顔で おめでとうって ちゃんと言ってあげれるから

もう そんなことどうでもいいんだ。



私は この世にどんな形でいても
浩一郎がいないと 耐えられないから


タクシーを飛び出して 初めて入った大きな病院を
慌てて駆けぬける。

エレベーターのボタンを 何回もせわしなく押した。


「早く 早く」


階段で行こうかと思ったけど 八階までは 自信がない。
そのうちエレベーターが開いて 飛び乗った。


八階


会ったら 先に 謝ろう


勝手に仕事辞めて 契約違反したことちゃんと謝ろう


エレベーターのドアが開いて
廊下の案内板を確認しながら 走った。


そして 浩一郎の病室が近づいてくると 急に
怖くなって 足がすくんだ。

足が震えてうまく歩けなくなっていた。
ドアが閉まっていた。


心臓の音が大きくなる。
大きく息を吐いて ノックをするけど 無言だった。

静かにドアを開けて 病室へ足を踏み入れた。
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