奥様のお仕事
「ご主人 検査から戻られてますよ」

看護師さんに声をかけられ慌てて病室に戻った。


カーテンを開けると

「よかった・・・また消えてしまったかと思った」


たまらなくなって抱きついた。


「もうどこも行かない!!!
ごめんなさい 私・・・・もう 浩一郎に
いらないって言われるまで そばにいるから!!!」


浩一郎の手が私の頭を優しく撫ぜた。


「いらないなんて言うか ばかやろう・・・・・。
ずっとずっと手に入れたくて
悩んで葛藤して待ったんだ・・・・・・・」

苦しそうな息に

「元気になったら ちゃんと聞くから・・・・
今はもう 無理しないで・・・・・・
どこにも行かないから・・・・・・・」



「よかった・・・・・
あの血だまりの中で もう二度と会えないと覚悟したんだ」


「私も無理させちゃったんでしょう」


「でも こうやって戻ってきてくれた・・・・
それだけでも 血は一杯出たけど・・・・
得るものは大きかったよ」


「バカ・・・・・」


かさかさに乾いた唇に触れた。


「私も話したいことがあるの・・・・
ちゃんと話すから・・・・元気になったら・・・・・ね」


もうお互い言いたいことはわかっていたけど
もう浩一郎から絶対に離れないから・・・・・・。
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