奥様のお仕事
港に迎えにきていたのは 祖母と同じくらいの年で
白いひげを蓄えているワイルドな男性だった。


「実さん」

祖母は飛び上がり 俺に

「いい男でしょ」

と言ってウインクをした。


「久しぶり ビックリしたよ
突然なんだもんな」

男性は人なつこそうな笑顔で 俺を見て

「立派な孫さんがいるな
跡継ぎの心配もいらないね 華ちゃん」


「私は会社のことはさっぱり~
でもウチの浩一郎は 自慢のできる子なの」


俺は恥ずかしくなって頭をかいた。


「チーコがいたら すごく怒られちゃいそうだけど
あなたも一人で大変だったわね」


「まさか 風邪をこじらせてあんなに早く逝くとは
思ってもなくて 一人娘を育てるのに必死だったよ」


「娘さんも・・・・お気の毒に・・・・・
実さんのご心中察することもできないわ」


「いや また生甲斐残ってるからさ
俺も頑張らんと・・・・・・」


「あら?生甲斐?」


「孫娘だよ 可哀そうに悪い親のところへ
生まれてきてしまったよ」


祖母の初恋の人はたくさん苦労していそうな感じだった。


「乗って
後部座席に 孫娘眠ってるから・・・・・
悪いけど ボクちょっと狭いけど座ってや」


祖母は助手席へ 俺は後部座席のドアをあけた。
< 266 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop