奥様のお仕事
「こーちろー帰ったらダメ~」

泣くマリンが 可哀そうで
もう家に帰りたくなくなっていた。


「また会いに来るから」


「ダメダメ~~~~」
ワンワンと泣く マリンに思わずつられて
不覚にも 泣いてしまった。


「優しいな 浩一郎くん」


「私の孫だもの」


こんなに別れが辛いなんて
きっとこの日のことは 幼すぎて マリンは覚えてないだろう



船に乗る前に もう一度抱き上げたマリンに


「二十年後 迎えに来るよ
それまでどうか 俺だけを待ってて・・・」


こんなバカな台詞どうせ 覚えてるわけない。



「マリンは俺の お嫁さんになるんだよ」


頭がおかしいこと言ってるのはわかっている。
気持悪さに吐き気がするけど


でも・・・・・でも


「こーちろー帰っちゃダメ」


泣きじゃくるマリンの頬にこっそりキスをした。


ダメだろ 俺
何してんだ・・・・ロリコンもいいとこじゃん


だけどだけど



船が動き出して マリンの泣き声がどんどん遠くなり
姿も見えなくなった。

涙が後から後から流れ落ちる。


「浩一郎・・・・私の夢 叶えてくれたらうれしいわ」

夢見る少女になった祖母がそう言った。


祖母の初恋のせいで 俺も頭がおかしくなったのかもしれない・・・・。
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