奥様のお仕事
「何をウロウロしてるんだ?」

男用のブラウンのガウンを着て浩一郎が出てきた。

目のやり場に困る。
冷蔵庫から 缶ビールを出した。


「マリンは ビール飲めないのかい?
もう成人してるんだから 飲んでいいんだよ」


「や あまり好きじゃないです」


「そうか じゃ」

缶ビールを 私に持たせた。


「だから好きじゃないんです」


「そうじゃなくて」


浩一郎がグラスを差し出した。


「注いでくれるかい」


「あ すみません 気がつかなくて」


祖父は自分でやってたから 心の中で
自分でやればって 思った。



ビールを注ぐと
浩一郎はグラスを持って ニッコリ微笑んだ。


「マリンに注いでもらったビールはきっと美味いぞ」


優しい顔の浩一郎に戻って 喉を鳴らして飲み干した。


「あ~美味い」


一瞬 本当に一瞬 本当に美味しそうな顔をした浩一郎が
すごく可愛いと思った。


「マリンもさ 少しは付き合えるようにしてほしいな
けっこう酒の付き合いは大事だからね」


私にも グラスを持たせて少しだけ 注いでくれた。

「同志に乾杯」

グラスの音が響いた。

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