奥様のお仕事
「明日から マリンのことは 
そういうことで紹介して歩くから マリンは堂々と
自己紹介すればいい。シナリオは作ってあるから」


そう言うと 私に資料を渡した。


「シナリオって・・・・」


「それに沿って行動してくれればいい
私がいる時は 極力無駄な会話はいらないから
微笑んでそばに立ってるだけでいい
私がうまくやるから」


「そんな……そんなこと許されるんですか?
私は 長谷さんのこと知らないのに」


「長谷さんじゃなくて 浩一郎でいいから
何度も同じ指摘させないでくれ。
これはビジネスだから マリンはその仕事をうまく
こなしてくれればいいだけだ。
本当に結婚するわけじゃないから 事実婚ってやつにこだわる」


「それはそうです。困ります」


「世間上そう演じてくれればいい
あくまでも 私たちは遠距離恋愛を経て結婚する
その形を忘れないで」


「突然言われたって・・・・・・」


「マリンは飲みこみが早そうだからな
しっかり頼むよ。頑張ってもらえたらさっきも言ったけど
時給も上がるしボーナスも考えてもいい」


「そんな人をだますなんて
何のためにだますんですか」

こんな業務内容で 私に勤まるわけないよ
不安で押しつぶされそうだった。
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