奥様のお仕事
緊迫した空気が流れている。

私を見る 四人の目は もう敵を見る視線。

「それでいつから付き合ってるんだ?」

挨拶もそこそこ
浩一郎の父親が 口火を切った。


「もう五年だね マリン」


「はい」

乗り遅れないように 集中する。


「五年ってあなた 十五の時から?」
母親の声が上ずった。


「変な想像しないでよ。俺は五年待ったの。
マリンが成人するのをね……」


仕事相手の芸術家でもあり 自分が大ファンである
黒木氏の孫娘と初めて出会ったのは 五年前

一目見て恋に落ちたけれど
まだマリンは十五歳 待って待って十八歳になったマリンに
思いを打ち明けた。

戸惑うマリンと遠距離恋愛で気持ちを通わせ
黒木氏の突然の死もあり
プロポーズをして 結婚をすることにしたと


昨日読んだ時は簡潔なシナリオだったけど
浩一郎が話す言葉は すごい恋愛をして
今日に至ってきた二人に出来上がっている。

すごいな・・・・・・
横で思わず感心するほどだった。


これだけ嘘を巧みにつけるなんて
信用できないわ・・・・なんて 他人事みたいに心でつぶやく。


「勝手なことを突然言い出すな」
気難しそうなじいさんが 言葉を遮る。
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