《詩集》反証と感傷

水底

『水底』


濁り曇った水の中
腕を一本差し出して

人差し指で触れてみる

ひやりと冷たい塊が
擽ったそうに転がった

ころころころろ
遠ざかる

大事な何かが遠ざかる

私はそれを止めたくて
足を一歩踏み出した

新しい靴のまま
濡れてく裾も構わずに

引き返すことさえ忘れ去って

不透明な水底へ
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