海辺で恋するシンデレラ ~ Side story ~
カランカラン……
Barのドアを開けると、軽快なベルの音が店内に響き渡る。
「いらっしゃい」
「マスター、あの……」
「来てるよ」
短くそう答えたマスターは、視線をカウンターの隅に移動させる。
その視線にそって顔を向けると、肩に少しつくくらいまで伸びた黒髪が
カウンターに突っ伏している女性の頬にかかり、顔を少し隠してはいるけれど
間違いなく、彼女だ。
良かった、とホッ胸を撫で下ろしたのものの少し緊張しながら彼女の隣の椅子に腰かける。
「亜紀。起きろって」
酔いが回ったのか、スースー気持ちよさそうな寝息をたてている。
「ん……」
肩を何度か揺すってみるものの、ちょっと声を漏らしただけで起きようとはしない。