海辺で恋するシンデレラ ~ Side story ~
そんな彼女の肩を支えるように店を出ようとして、入口の手前で足を止めた。
店長である橘柊司(たちばな しゅうじ)に釘をさすために。
「橘。分かってると思うが、逃げようなんて考えるなよ」
チラッと俺たちの方に、目だけを向けたが直ぐにそれは舌打ちと共に逸らされる。
「チッ……逃げねーよ」
まぁ例え逃げたとしても、俺からは逃げられない。
どんな手を使っても、居所を掴んで見せる。
俺の情報網を、甘く見るなよ。
だけど今回の橘の件については、俺の落ち度でもある。
サンゴちゃんには悪いが、正直なところ橘の女に対する手癖の悪さは情報があった。
ただ、それを波瑠に言えば間違いなく二人を引き離しただろうし
記憶を無くし、橘を恋人だと思い込んでいた彼女に更なる混乱を招くことになるだろうと
敢えて言わなかった。