海辺で恋するシンデレラ ~ Side story ~
月が雲に隠れ、薄暗くなった空を見上げて息を吐く。
「あんた、家どこ?」
「え……」
「ちょっと歩くけど、バイク留めてあるから送ってくよ」
「でも……」
「……こんな夜中に、女の子一人で放置するほど鬼畜じゃないから、俺」
彼女の家が分かれば、名前もわかる。
結城ってだけじゃ、まだ情報が少なすぎだ。
せめて下の名前や住所が分かれば、あとは就職先だとか友人関係も探し出せる。
それに、この格好だしな。
このまま放置しようものなら、サンゴちゃんの二の舞になり兼ねない。
目の前で、海に飛び込むとか本当に心臓に悪い。
それが例え知り合いでなくても――。