海辺で恋するシンデレラ ~ Side story ~
俺の座る席はいつも決まっていて、今日も一番入り口に近いカウンター席に腰をおろした。
「今日は随分早いね。」
マスターが俺の目の前におしぼりとコースターを置いて「何飲む?」と聞いてくる。
彼は、オールバックの黒髪に鼻の下に口髭を生やしている
ちょっとダンディな、俺の憧れの人。
「まーね。今日は早く終わったんで。」
零時を少し過ぎたところだけれど、俺的には早い時間だ。
いつもなら二時三時は当たり前だから。
俺は、この店からあるいて十分くらいの距離に
sourire〈スリール〉っていうレストランを経営している。
だから翌日の仕込みやら新作の試作品なんかを作っていると
だいたいこの時間になるんだ。