海辺で恋するシンデレラ ~ Side story ~
「マスター、これマルガリータと違ーう。」
注文しようとしたら、カウンターの奥に突っ伏していた女性客が
マスターに文句を言い始めた。
はぁ~、ゆっくりしようとしたけど、こういう絡む客がいると台無しなんだよな。
なんて内心溜息を吐いた。
マスターは「ごめんごめん」と困った顔をしながら彼女の前に立った。
彼女は、氷水の入ったグラスを、俯いたままマスターに突き返している。
どんな女かと、チラッと横目で覗き見る。
長い髪で隠れ、顔はよく見えないけれど確実に『結城亜紀』だと分かった。
二日前、Heart reef Café で初めて会った女だ。
俺は、職業柄一度見た人は忘れない――。
「……なに、この酔っ払い」
半ば呆れ気味に、マスターに聞いた。
「まぁ。最近いろいろ、あったみたいでさ。」
あぁ……まぁ、そうだろうな。