海辺で恋するシンデレラ ~ Side story ~
見覚えがあるのか、亜紀の眼がだんだん大きくなって
スマホから俺に視線をあげた。
「亜紀がみたの、姉貴だろ?」
「うん……でも、なんでキスなんか……」
「いや、あれは挨拶みたいなもので。外国じゃ、別れるときとか頬にキスするだろ?深雪も海外生活長いから、習慣になってるんだ」
奥の半個室に案内し食事を済ませた姉貴は、二時間くらい店に居座った挙句
その間ずっと俺に説教をし続けた。
有名店になったものの、いつまでこの仕事をするのか
親の仕事を継ぐ気は無いのかとか
そんなチャラい格好をして、みっともなくはないのかとか……言いたい放題。
チャラいとか言われても、別に着崩してるわけでもなく
髪の色だって海に入っているからで、別に染めてるわけじゃない。
店も忙しさのピークを迎え、いい加減に帰ってくれと何度も言ったが
聞く耳もたず喋り続ける深雪。
暫くして婚約者からの電話が入り、やっと帰ると言い出した。
それが大体、22時過ぎだったと思う。