海辺で恋するシンデレラ ~ Side story ~
「本当に、分からない?」
「違う。柊司の時もそうだったから。だから、ちゃんと聞かせて。本当に私の事、好き?」
あぁ、そうか。
橘は複数の女に同じ言葉を言ってたいからな。
だから、亜紀は怖いんだ。
同じことの繰り返しになることを、恐れている。
額と額を合わせて、近距離で彼女の瞳をみつめる。
心配そうに揺れる瞳。
今にも泣き出しそうだ。
俺は深呼吸を一つして、彼女のためだけの言葉を口にした。
「亜紀、好きだ。俺のたった一人の彼女になって」
「……」
「返事は?」
「はい……よろしく、お願いします」
ポロリと大粒の涙が一つ零れ頬に流れた。
その涙を拭うように、俺は彼女に口付ける。
深く長く、お互いを求め合うように――。