Love Butterfly
 ふと気がつくと、隣で、さゆりが居眠りをしていた。
「おい、もう寝ろよ」
「……どこで?」
「ベッドで寝ろよ。俺はコタツで寝るから」
「コタツなんかで寝たら、風邪ひくで」
まあ、確かに、そうだ。風邪をひくと、板場に入れなくなるから、それだけは避けたい。
「一緒に寝よ」
「ば、バカか! そんなこと、ダメだ!」
「兄妹なんやから、ええやん。あ、それとも、変な想像した?」
「するか! お前なんか、タイプじゃねえって言ってんだろ!」
「ふうん。うちは結構、おにいちゃんのこと、タイプやけどなあ」
さゆりは笑って、ベッドに転がり込んだ。
「おにいちゃん」
「なんだよ」
「一緒に寝て」
そう言ったさゆりの目には、不安があふれていた。俺はその目に、ちょっとドキっとして、時計を見ると、もう二時を過ぎていた。
 風呂に入るのも、もう眠いし、まな板を片付けて、コタツの布団をベッドにかけて、さゆりの横に入った。布団の中は、さゆりの体温であったまっていた。
「くっついたら、あったかいね」
 無邪気にくっついてくるさゆりのカラダは、さっきよりずっと熱くなっていて、俺の腕に、柔らかい胸を感じて、思わず、さゆりを抱きしめてしまった。
「明日、布団買うからな」
「うん」
「電気、消すぞ」
「うん……おやすみ、おにいちゃん」
さゆりはそう呟いて、俺の胸に顔をうずめて、目を閉じた、つけまつげはなくても、さゆりのまつげは長くて、寝顔は、なんか……天使、みたいに見えた。俺はその瞬間から、さゆりが、愛おしくて、仕方がなくなっていた。
< 29 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop