キミに翼を授ける
1GOAL
平凡な生活
優しく風が吹き、カーテンがふわりと膨む。
同時に差し込んだ陽が、黒板に濃淡を付ける。
飛び交っているのは、たわいもない会話や机を動かす音。そんな教室の、窓際の席。
机の上にはお弁当。目の前には…
「ねぇ、藍ってば!聞いてんの!?」
むくれた顔の女。
その聞き飽きた声が鼓膜を震わせると、私の引きつりそうな表情筋は無理矢理笑顔を作る。
「ご、ごめん佑子ちゃん、なんて?」
「だからぁ、こっちの方がいいと思わない?」
「あ、うん、私もそう思う…」
「だよねだよね!さすが藍。分かってるわ~」
携帯の画面を見せてくる佑子ちゃんに適当に相槌を打つと、出そうになった溜息を飲み込んで窓の外へと目をやった。
グラウンドで楽しそうにサッカーをしている男たちが眩しい。
仲良しだなぁ楽しそうだなぁ、なんて頭の中でぼやきながら卵焼きを口に運ぶ。
…あまり美味しく感じない。
お腹、空いていたはずなのに。