キミに翼を授ける
(…もう帰りたい。)
無意識に溜息が零れた。
水泳部がまだ肌寒い中水着で登場しても、野球部がネタ混じりのアピールをしても、周りの楽しそうに笑う雰囲気には馴染むことが出来ない。
バスケ部がパス練習を実演しても、陸上部が格好良く走り抜けても、テニス部がイケメン揃いでも、黄色い声を上げることが出来ない。
やっぱり、来なければよかった。
変な意地張らなければよかった。
『テニス部の皆さんありがとうございました。最後は…サッカー部です!』
(やっと終わる…!)
それまで俯き気味だった視線を、ステージへと上げた。
と、
身体が硬直した。
私は大切なことを忘れていたんだ。