キミに翼を授ける


残る気なんてさらさらない私にとっては、部活見学なんかよりお兄ちゃんに見つからないことが重要だ。


人ゴミを縫うように避け、体育館の外へ出ると、手に持っていたスリッパを地面に落とす。


そしてそれに足を潜らせる。



(なんとかバレずに帰れそ…)



ペシッ



頭を軽く叩かれた私は、恐る恐る振り向いた。


まさか…



「藍お前ふざけんなよ」



…最悪だ。奴に見つかった。
ニッコリとわざとらしい笑顔を浮かべるお兄ちゃんの額には怒りマークが見える。



「…どうしたの?」

「どうしたのじゃねぇよ。行くぞ。」

「え?ちょ…っ」



腕を強引に掴まれ、すごい力で引っ張られる。抵抗しようにもお兄ちゃんの力には敵わない。



「っどこ行くの?私これから帰るんだけ…」

「グラウンド」



質問を投げかけると、食い気味で返された。



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