キミに翼を授ける


合わせた机の向かい側に座る佑子ちゃんは、こちらを気にすることなく左手でポッキーを踊らせ、右手で器用に携帯を触っている。


"友だち"と呼べる関係にあるのかも分からない彼女のその行動に、今更何も言うつもりもない。


むしろ、人見知りな私に話しかけてくれる人といったら彼女くらいなものだから、一緒に食べようと声をかけてくれたことに感謝しなければいけない。


10日前に行われた入学式でも一番に話しかけてくれたのも佑子ちゃんだった。
そのときは彼女が女神に見えたっけ。


…女神だったはずなのにな。


いつも佑子ちゃんは自分の話ばかりで、私はそれに合わせてニコニコしているだけ。
お陰で作り笑いがどんどん上手になっている気がする。


私は満たされたお腹をポンと叩くと、空っぽになったお弁当箱の蓋を閉じた。



「そういえば昨日久々に元カレに会ったんだけどぉ」

「うん」

「なんかまだウチに気あるっぽいんだよね、ひつこいっつーの」

「はは…」



こんな風にして過ごした一週間は薄っぺらいものだった。



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