キミに翼を授ける
「頼む!」
だけど、目の前でパチンと音を立て手を合わせ、拝むポーズをするお兄ちゃんを見れば冗談で言っているようではなさそうで。
「わ、私には出来ないよ…」
顔を背け、歯切れの悪い返事をした。
っていうか、そもそも。
「…さっき、マネージャーは定員オーバーとか言ってなかったっけ?」
「いや、それはお前がマネージャーになるからオーバーするんだよ」
「え?」
「残年ながら去年からサッカー部は、マネージャーは各学年に一人ずつって決まりができたんだよ。だからお前がマネージャーになるから定員オーバーだろ?」
「いや…ちょっと待って。何で私がマネージャーやるってことになってるの。」
「まーまー。理由があるといえばあるんだよ、お前に頼む理由。」
「理由…?」
わざわざ、自分のことで精一杯というかままなってすらいない私に頼む理由があるっていうの?
必死にその"理由"とやらを考えていると、
ジャリッ
すぐ後ろで砂を踏んだ音がした。
振り返るとそこには、みんなと同じ練習着に身を包む男が立っていた。