キミに翼を授ける
すると横でお兄ちゃんが呆れたように溜息を吐いた。
「遅ぇよ飛鳥(あすか)。また寝てたのか?」
「あー、はい。ってか、今学校来ました。」
お兄ちゃんと話す"飛鳥"は、まだ少し眠たそうで、何故かそれですら色っぽく思える。
「はぁ!?お前何してんだよ部活だけしに来たわけ!?」
「そんなとこですね。とりあえず走ってきます。」
「ちゃんとストレッチしろよ!?」
「はい」
彼の影が退けると、また、私の目にはキラキラと眩しい練習風景が映し出される。
「ったく、飛鳥は。あいつまじ遅刻魔ってか三年寝太郎っつーか。」
やれやれ、と言うお兄ちゃんにバレないように、私は熱くなった頬を隠した。
頭をかく仕草も大きな欠伸にさえも、彼から目が離せない。目が彼を追いかける。
「俺がお前にマネージャー頼むの、半分はあいつのせいみたいなもんなんだよな。」
「え…?」
また意味の分からないことを言い出したお兄ちゃんに、私の頭は再び混乱する。