キミに翼を授ける
なるほどなー、と腕を組む宮永くんが当たり前のようにお兄ちゃんの名前を言ったことを疑問に感じた。
まぁ別に、2人が知り合いなんて別に驚くことでもないのかもしれないけど。
あのバカ兄貴のことだ、誰彼構わず話しかけるんだろうし、きっと無駄に顔が広いんだろう。
「お兄ちゃんを知ってるの?…なんで?」
聞いてみると、宮永くんは一瞬こちらを見た。
そしてすぐに目線を前に戻す。
「…入学式。俺、ふらっとここに来て。一人で座ってたんだ」
それから彼は、聞いたことのない穏やかな声で話し始めた。
「そしたら後ろから紺くんが現れて。声かけられた。"サッカー部入部希望?"って。だけど俺、その時迷ってて。」
「えっ!?」
宮永くんといったら、休み時間ごとにサッカーボールを持ってグラウンドに駆け出すようなサッカー馬鹿だよ!?迷うことなくない…?
宮永くんはポリポリと後頭部をかいた。