キミに翼を授ける
今日からは午後の授業が始まり、本格的な高校生活が幕を開ける。
でも、たとえ学校で過ごす時間が長くなったとしても、この今にも破けてしまいそうなくらいペラペラな日常は何も変わらない。
変わるはず、ない。
意気地なしな私は周りに合わせて生きることしかできないのだから。
自分の意見を殺せば一人ぼっちにならないんだったら、絶対その方がいい。
無難に暮らせればそれでいいんだ。
…そもそも。
第一志望の高校の受験に失敗してしまった時点で、私に楽しい高校生活は待っていなかったのだから。
ガラッ
私の思考を妨げたのは勢いよく開いたドアの音と、そこから入ってくる男たちの騒がしい声だった。
「やべ、飯食う時間ねぇ!」
とびきり大きなその声は、男のわりに少し高めだ。
「え、食べてなかったの?あと5分くらいしかないよ休み時間。」
「まじかよ!早くサッカーしたくて飛び出したから食べんの忘れてた!」
その声の主が近付いてくるのを遠くに感じながら、しつこく喋り続ける佑子ちゃんの話に耳を傾ける。