キミに翼を授ける


振り向いたお兄ちゃんは不思議そうな表情を浮かべたが、一瞬でひらめいたかのように切り替わる。



「なんだ〜?…もしかして、マネージャーやる気になった!?」

「うん…そのことなんだけど」



チラリ、グラウンドでパス練習を始めた佐山先輩に目をやった。


彼に対してなのか、緊張からなのか、今にも心臓が飛び出しそうになりながらも、深呼吸をして覚悟を決める。



「やってみようかな…って。」



なんだかお兄ちゃんの目を見ることができない私は、砂しかない地面と睨めっこ状態になった。



「え、うっそ、まじで?」

「私でいいなら…」

「藍に頼んでんじゃん!うわ、やったー!!」



ズキッ



歯を見せて笑うお兄ちゃんに、胸が痛んだ。
…同時にお兄ちゃんの言葉を思い出す。



"けどそいつら、ただ飛鳥に近付くためだけにマネージャーになったわけで───"



もしかして、私も去年クビにされたマネージャー達と同じ…?



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