キミに翼を授ける
一気に心が罪悪感でいっぱいになった。
確かに、佐山先輩に近付きたいからなんて理由、不純でしかない。
「これからよろしくな!」
「う、うん…」
ズキズキ、胸の痛みはとれない。
ちゃんと仕事はする、サボったりなんか絶対しない。
だけどこの下心がある限り、ずっとこの罪悪感と戦っていかなくてはいけないんだ…。
ドンッ
心で葛藤していると、いきなり後ろから人にぶつかられた。
突然のことに私はよろめく。
そのぶつかったであろう人影は、ベビードールの甘い香りをさせて通り過ぎると、私に背を向けて立ち止まった。
「あの…サッカー部キャプテンの椎名さんですか?」
可愛くて、少し尖った声。
顔が気になるけれど、こちらから見えるのは女の後ろ姿と、頬を染めたお兄ちゃんの顔だけだ。