キミに翼を授ける


ほのかに残る彼女の香りが、昨日の放課後と重なる─────・・・




「明日も来ます。今日はこれで失礼します!」


ベビードールの香りが消えると、お兄ちゃんが口を開いた。



「…なんか、圧倒されたわ」

「わ、私も…」



彼女が去ってからもしばらく続いた緊迫した空気が、ようやく溶け始める。


だけど私とお兄ちゃんの会話は、少しぎこちなかった。



「ま、まぁあれだ、うん。お前がその気になってくれてよかった。」

「う、うん…」

「とりあえず、明日からマネージャー体験ってことで、放課後、体操服に着替えてここだからな!」

「わ、わかった…」

「…」

「……じゃあ、先帰ります」

「……おう、気を付けてな。」



お兄ちゃんが何を思っていたのかはわからない。
だけどきっと彼女の強い気持ちに感じたことはあるだろう。


少なくとも私は、きっと彼女の方がマネージャーに向いているだろうって思ってしまった。
不純な動機でマネージャーになろうとしている自分なんかより、きっと────・・・


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