キミに翼を授ける


モヤモヤした気持ちでゆっくりと足を進めている内に、私は指定された昨日と同じベンチに着いた。
今日からは部活体験が始まるため、練習着の先輩たちに加え体操服の一年が混じっていて昨日よりもグラウンドの人口密度が高い。


ゴールを運んだりと準備に取り掛かる周りに乗り気じゃないものの、何か手伝わなきゃ…とキョロキョロ見回す。


一番に目に止まったのは、ボールカゴを引っ張りこちらへ近付いてくる男の人影。


男は緩く練習着を着こなしふわふわと髪を揺らして────、その顔がはっきり見えた瞬間、私の身体は硬直した。


そして私があまりにも見ていたせいか、男と目が合った。



「あ、またいる。」



…優しくて色気のある声。
一気に熱が、顔に集まる。


彼は私の前までボールカゴを引っ張ってくると、それを離した。


色素の薄い綺麗な瞳には、私が写っている。
考えるだけで鼻血が吹き出そうになる。
鼓動はまるでドラムの様に暴れ出す。


心の準備ができていないときに現れないでください…佐山先輩!


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