キミに翼を授ける
少しだけ、少しだけだけど…私なんかに笑ってくれた……。
余韻に浸る私は息をすることも忘れて、ただ何度も蹴り上げられるボールをぼーっと目で追った。
「集合〜!!!」
お兄ちゃんの大きな声が響いたとき、私はやっと我に返る。
…夢の時間は終了。
佐山先輩もリフティングをやめ、お兄ちゃんの元へ走って行った。
久しぶりに吸い込んだ酸素は、はぁ…と溜息となって放出。
(…切り替えなくちゃ)
夢から覚めた私は、頬にまだ熱を残しながら一歩踏み出す。
と、肩を軽く叩かれた。
「藍ちゃん…よね?」
ニコッと優しく微笑んで立っていたのは…美人マネージャー、須和先輩だ。
「は、い…」
初めて真正面から見た彼女に女ながらドキッとする。
アーモンド型の大きな目、高い鼻、大きくも上品な口元。まるでハーフの様な顔立ちだ。
「紺に似てるからすぐ分かった!今日はよろしくね」
「は、はい!」
「さっそくマネージャーのお仕事。ドリンク作ろっか!」
「はい!!」