キミに翼を授ける
ドクンと、心臓が反応したのを感じる。
声の落ちてきた方を見上げると、予想通りの人物が眉間にシワを寄せて立っていた。
「…宮永晴留。」
サッカーボールを大事そうに抱えるその男の頬には汗が一筋。
彼はそれを肩にかけた派手なタオルで拭い取った。
「なんだよ」
ぶっきらぼうに言う宮永くんは、私の…天敵、みたいな存在。佑子ちゃんの前の席の彼はよく私に突っかかってくる。
いつも楽しそうで男子の中心にいて、女子にも可愛がられて。
まさに高校生活をエンジョイしている彼の存在自体が私にとって嫌味なのに、何かとケチを付けてくるものだから余計に気に食わない。
「そっちこそ」
嫌そうに答えた私に、彼はパタパタとシャツを扇ぎながら、キツイ口調で言葉を放つ。
「…部活紹介はそんなノリで行くもんじゃねーだろ」
私を見下ろす目は鋭くて…心の奥まで見透かされているみたいで、怖い。
続けて宮永くんは、さらにキツイ言葉を投げつけてきた。
「お前さ、前から思ってたけど自分の意思ないの?見てて疲れるんだけど」
その冷たい声は、私の頬をカッと紅潮させた。