キミに翼を授ける


呆気なくやってきた放課後────。


私は一人、部活紹介が行われる体育館へ向かった。




(し、知らない人がたくさん…)



たくさんの新入生がそこへ吸い込まれていく光景に、それまで迷わず進めていた足をピタリと止めた。
だけど私のしょうもない意地が、また足を突き動かす。



(帰ってたまるか…!)



扉を潜るとステージに吊り下げられた"部活紹介”と書かれた大弾幕や、まだ空席の多いパイプ椅子が目に入った。


後ろから近付く人だかりに押されるようにステージに近付いていくと、適当に空いている席に腰かける。


周りは友達同士で楽しそうにしている人ばかりで、場違いな空気に今にも押し潰されてしまいそうだ。


だけど一瞬で周りの椅子が埋まり、もう一度立つなんて勇気のない私は騒がしい館内の居心地の悪さに肩を落とすしかなかった。





『ただいまより部活紹介を始めます』



マイクを通した声が響くとやっと静寂が訪れる。



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