西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
 案外強い力で拘束され、どうしようかと無抵抗で悩んでいる間に、調子に乗せてしまったらしい。

 ヤツのナメクジのような指が、いつの間にか私の頬に触れていた。

 鳥肌を通り越して、背筋に悪寒が走る。


 ・・・もう無理!!! 嫌!!! 気持ち悪っ!!!!


(仕方ない……)

 本当は、身長差や固い床、それから、後の事を考えるとコレだけはちょっと・・・って思ってたけど。

 これ以上、攻撃的な視線や暴力的な言葉、そして何より、コイツのセクハラに堪えるのは、いくら私でもサイコーに苦痛ってヤツだ。


 私は、頬を這いずりまわるヤツの手を握り、思い切って懐に飛び込む。


「およ? やっと僕に心を開いて……わっ!?」

 グッと向こう側に体を押すと、驚いたヤツの体から、フッと力が抜けた。


 ──イケる。


「……んなワケあるかぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

 絶叫と共に、私は飛び込んだヤツの胸ぐらを掴み、全身全霊を傾ける。


 次の瞬間、永峯 瑠愛は空に舞い、そして床に伏していた。

 
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