西森さんと瑠愛くん。(仮)
即刻、町内のありとあらゆる格闘技道場の門を叩きまくったのは、言うまでもなかろうて。
「……しかしまぁ、日に日に逞しくなりますね。貴女」
中庭に追いやられた百合や菊の花束を見ながら、保健医は相変わらず笑っていた。
「素直に『護り隊』に入って、ジッとしていれば、目を付けられないものを…」
「あんな好き者軍団に入れって? 冗談は顔だけにしてよ保健医」
近くにあった人体模型の“樋口くん”に肝臓を拝借して、私は保健医に投げつける。
「好き者軍団、って……樋口くんを投げないで下さい」
保健医は見事にキャッチして、私に投げ返してくる。
投げるなって言ったくせに、自分も投げてるじゃん・・・。
「……好き者じゃなきゃ何? 自己主張が出来ない人間の集まり?」
投げ返された肝臓をヒョイと避けて、私はまた、保健医に問う。
・・・後ろで鈍い衝突音がしたけれど気にしない。