西森さんと瑠愛くん。(仮)
 

 即刻、町内のありとあらゆる格闘技道場の門を叩きまくったのは、言うまでもなかろうて。


「……しかしまぁ、日に日に逞しくなりますね。貴女」

 中庭に追いやられた百合や菊の花束を見ながら、保健医は相変わらず笑っていた。

「素直に『護り隊』に入って、ジッとしていれば、目を付けられないものを…」

「あんな好き者軍団に入れって? 冗談は顔だけにしてよ保健医」

 近くにあった人体模型の“樋口くん”に肝臓を拝借して、私は保健医に投げつける。

「好き者軍団、って……樋口くんを投げないで下さい」

 保健医は見事にキャッチして、私に投げ返してくる。

 投げるなって言ったくせに、自分も投げてるじゃん・・・。

「……好き者じゃなきゃ何? 自己主張が出来ない人間の集まり?」

 投げ返された肝臓をヒョイと避けて、私はまた、保健医に問う。


 ・・・後ろで鈍い衝突音がしたけれど気にしない。

 
< 15 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop