西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
 存外、おとなしくそんな事を言ってくるものだから・・・何だか、調子が狂ってしまう。

「………何なの? 私に何か用?」

 私がそう言うと、ヤツは自分の鞄の中をガサゴソと漁り、何かを取り出した。

「これ」

 差し出されたのは、ウサギのマスコットが付いたストラップだった。

「………何?」

 少し距離を取りながら、そのウサギを凝視する。

「作ったの。これ、渡したくて、待ってたんだ」

 至って真面目な表情で、ヤツはそれを指先にぶら下げている。

 私が取りやすいように、配慮しているのだろうか。

「………どういう風の吹き回し?」

 突然のヤツの変貌が、ただただ不気味でしかない。

 私はさらに、ヤツからジリジリと遠ざかる。

 すると、ヤツは仕方ない、と言いたげにふぅと小さく息を吐いた。

「素のままが良いんでしょ?」

「え」

 間の抜けた声が、再び私の口を吐いて出る。
 
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