西森さんと瑠愛くん。(仮)
さっきまでチワワのように大人しかったヤツは、いつものゴールデンレトリバーのような笑顔になりながら、信じられない事を言った。
「僕もね、山田先生と仲良いから♪」
山田先生──保健医の事だ。
あのニッコリ眼鏡・・・事もあろうに、永峯 瑠愛に私の情報を売ったのか!!
(………んの野郎………)
後で樋口くんをバラバラにしてやろう、と復讐を誓いながら、私は怒りを悟られまいと押し黙る。
ヤツに弱味を握ったと思わせたくない。
「ねぇねぇ」
レトリバーは、耳障りな甘ったるい声で、揚々と話しかけてくる。
「ウサたん作ったし、下駄箱も綺麗にしてあげたから、僕とデートしてよ♪」
下駄箱も綺麗に。
その言葉で、私はハッとして、自分の区分に目をやった。
「……それが狙いだったの?」
何かを悟ったような気がした。