西森さんと瑠愛くん。(仮)
「……じゃあ、どうしてみんなとデートするワケ?」
にわかには信じがたく、自分でもそうだと思うくらい冷たい声で訊ねた。
「……一回デートすれば、みんな満足するみたいだから。それっきり、しつこくされる事なくなるし……」
泣きそうな目をして、レトリバーはチワワに戻り、飼い主に置き去りにされたみたいに落ち込んでいる。
「……俺が自分から誘ったの、西森さんが初めてなんだよ……」
ぎゅうと力を込められて、腕を捕まれていたことを思い出した。
存外強い力と、裏腹、消え入りそうな声に、ヤツの言い分に嘘は無いのだろうと、少しばかり警戒心をほどいてみる。
「………まぁ、下駄箱綺麗にしてもらったし。考えてあげなくもないわよ?」
「………ホントに?」
チワワの顔が、飼い主が迎えに来てくれたよろしく、パァっと明るくなった。
・・・しかし、私はただで抱き上げてやるような、優しい飼い主じゃない。