西森さんと瑠愛くん。(仮)
~止まない欠伸。
「ふぁ~……あ」
「………31回目」
保健医が何度も欠伸をするので、カウントして教えてやった。
「おや…そんなにしてました?」
「してる。すっごい気になるんだけど」
「すみませんねぇ。珈琲飲んでるんですけど、効かなくて……ふぁ~……」
そう言って、保健医は噛み殺す素振りも見せず、32回目の欠伸を宙に放つ。
普段より何割増しかでふにゃふにゃの保健医の顔を見ていたら、うつった欠伸を我慢するのがどうでも良くなってきた。
口の前に手を置いて、私も眠気を吐き出した。
永峯 瑠愛との“約束”から、2週間と少し。
一日の中で最も騒々しいハズの昼休みが、めっきり平和になっていた。
彼が何をどう言ったのかはわからないが、『護り隊』の一回デート権をめぐるランチタイム戦争が、一時休戦状態になっている。
安寧を取り戻したお昼時。
・・・どうやらあのチワワは、本気で私との約束を守ろうとしているようだ。