西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
 眼前に戻ったチワワが、両手を膝に当ててゼーハー言っている。

 廊下を一周して来たらしい。

(………どんだけよ)

 小さい降り幅でゆっくり上下する旋毛を見ながら、若干引きつつ、おかしくなって「ふふっ」と笑っていた。

 私の笑い声に、彼の旋毛が元の天井向きに戻っていく。

「………西森さんが笑った」

 我が子が初めて歩いたのを見た親かって顔をしながら、見つめられた。

「………何よ。悪い?」

 自分でもかなり久しぶりに、自分の笑い声を聞いた気がする。

 恥ずかしくなって、思わず視線を逸らした。

「それより、どうするの?」

 これ以上何かつっこまれるのが嫌で、話題を変える。

「どうするって…??」

「デートよ、デート!」

 察しの悪いチワワに促すと、制服のポケットからメモを取り出し、渡された。
 
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