西森さんと瑠愛くん。(仮)
デートの日。
> ちょっと遠出するから、歩きやすい靴で来てね!
> あ、その靴を写メで送って欲しいな♪
> デートの内容は内緒だょ!
> 朝早いけど良い??
> ちなみに7:30くらいに俺の家に来てもらえるかな。
・・・永峯君から来たメールは、ざっとこんな感じ。
今日に至るまで、ついぞデートの内容を教えてはもらえなかった。
不安しかない中、私は永峯家の前にいた。
奥行きはわからないけれど、こぢんまりとしたプロヴァンス風のドールハウス、といった趣だ。
格子の門から見える庭は、それほど広くはないが、花壇も樹もよく手入れされている。
「………ふぅ………」
緊張する。間もなく約束の時間になるが、インターホンを押そうとする指が震えていた。
男の子の家を訪ねるなんて小学校以来で、しかもそれは、書類や宿題を届けるという任務だった。
遊びに誘われて出向くなど、自分史には皆無である。