西森さんと瑠愛くん。(仮)
(すごい……)
指定されたダイニングチェアに腰かけ、はしたないとは思いつつ見渡していると、永峯君は
「ちょっと待っててね」
と言って、私とお母さんを二人きり残し、ダイニングの先のドアへ消えてしまった。
(………えー………)
この上なく気まずいではないか・・・。
「ふふっ。自分の家だと思って、寛いで良いのよ?」
そんな心情を察したのか、カウンターの先でお湯を沸かしていた永峯君のお母さんが、声をかけてくれた。
「……はい、ありがとうございます」
お言葉に甘えて、私はちょっとだけ、体の力を抜いた。
「温かいもの、何か飲む? えっと…お名前、何だったかしら」
「あっ。すみません。私、永峯君の同級生の、西森 桃香(にしもり ももか)と言います」
お母さんのあまりの綺麗さに度肝を抜かれ、自己紹介するのを忘れていた。