西森さんと瑠愛くん。(仮)
慌ててペコリと頭を下げると、永峯君のお母さんは、またふふっと柔らかく笑った。
「桃香ちゃんね。可愛い名前」
「はあ…ありがとうございます」
「私は永峯 椿(ながみね つばき)です。気軽に名前で呼んでちょうだいね」
「あ、はあ……」
・・・年上の女性と話すのは、実は苦手だったりする。
ぎこちない答え方になってしまって申し訳ないな、と思いながら、どうして良いのかもわからなかった。
「カフェオレとか、ココアとかあるけど、何が良い?」
別段、気にするそぶりも見せず、永峯君のお母さん──椿さんは、楽しそうにカップを選んでいる。
「…じゃあ…ココアで」
楽しそうな様子に何だかほっこりして、自然と答えていた。
───お母さんって、こんな感じなのかな。
ぶら下がったカップの中からピンク色を取り、手慣れた様子でココアを作っている椿さんを眺めながら、ぼんやりとそんな事を考えた。