西森さんと瑠愛くん。(仮)
~メイク男子。
「やっぱり、肌も髪も綺麗だね~」
私の前髪を寄せてクリップで留めながら、永峯君が呟く。
「………そう?」
「うん。西森さん変な飾り気がないから、負担かからなくて荒れないんだよ」
話していても手を止めることはない。三つ編みを解いて櫛で梳き、後ろでまとめていく。
意外なほど流れるような手際の良さに、慣れているのかな、と思った。
「……飾り気がなくて悪かったわね」
褒められているのはわかっているが、あまりそういう経験がないせいで素直になれず、つい可愛くないことを言ってしまう。
「ケバいメイクも毒々しいネイルも、派手すぎる髪色も、好きじゃない」
コットンに化粧水を染み込ませながら、刺々しい声色で永峯君が言った。
普段そういう女の子にばかり囲まれているのに、彼の口から『好きじゃない』という言葉が出てきて驚いた。