西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
 永峯君は真剣な表情で、掌で伸ばしたクリームをまた、私の顔に塗っていく。

「……俺さ、メイクとか、髪の毛セットしたりとか、好きなんだよね」

 クリームを隅々まで丁寧に塗り終わり、次に使うリップをメイクボックスの中から選びながら、永峯君が言った。

「……そう。どおりで手際が良いと思ったわ」

「そういうの変かな?」

 リップの色と私の顔とを見比べながら、くりくりしたチワワの瞳が、翳りを見せながら揺れていた。

「……別に。少し意外だったけど、変だとは思わないわよ。好きな事があって、打ち込めるのは、良い事だと思うわ」

 私は思ったことを素直に述べる。

「……どっちの色が好き?」

 両手に違う色のリップを持ち、私に見せる永峯君の瞳からは、揺らぎも翳りも消え、何かほっとしたような表情が滲んでいた。
 
 
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