西森さんと瑠愛くん。(仮)
「……こっ……こんにち……は……」
永峯君とよく似た丸い大きな瞳が、私を刺すように見てくる。
独特の威圧感と吸い込まれそうな目力に、そういう事に慣れていたハズなのに、たじろいだ。
「………良い趣味してんじゃん、愛兄」
そう言って、妹さんはふいっと私の視線を解放して、向かい側のイスに座った。
永峯君がチワワなら、この子はペルシャ猫、といった感じだろうか・・・。
「こらっ」
朝食を運んで来た椿さんが、猫の額をペチリと叩く。
「ごめんなさいねぇ、口が悪くて…末娘の芽吹(いぶき)です」
代わりに椿さんが言うと、妹さん──芽吹ちゃんはトーストをくわえたまま、軽く会釈した。
「早く食べて行きなさいねぇ。電車間に合わないわよぉ」
急かしているのに、間延びする椿さんの声は、まるで危機感がない。
「わかってるってば!! てか何で起こしてくんなかったの!!」
「起こしたわよぉ。起きなかったじゃない」