西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
「……こういう話は、ご飯を食べた後にしなさいって、母さんが言ってた」

 淹れたばかりの紅茶を両手で包み、その水面を見つめながら、彼が言った。

「せっかくのデートなのに、暗いこと言ってごめんね……」

「……デートって、お互いを知るためにするモノなんじゃないの?」

 私の言葉に、永峯君はハッと目を見開き、こちらを見る。

「……まぁ、知って欲しくない事なら、聞かないし」

 任せる、という意味を含めて、言葉を切る。

 視線には応えられず、私は、水平線を真っ直ぐに見つめた。

 彼も同じように、水平線に向き直り、紅茶を一口、口に含んだ。

「………西森さんには、聞いて欲しい」

 私がそれにうなずくと、永峯君は何から話そうか探るように、少しの間、押し黙る。

 やがて、大きく息を吸い、そして吐いた。
 
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