西森さんと瑠愛くん。(仮)
「けど、なかなか上手くいかないものだね……」
目を赤くした彼が、私を見る。
「誰かをあしらえば、争う。それが嫌だったのに、いつの間にかファンクラブとか出来てるし、変なルールも出来てるし……西森さんはイジメられるし……」
ごめんね・・・。
震える声で呟くと、永峯君は帽子で顔を覆った。
密やかに嗚咽する隣で、私はまだ、水平線を見つめる。
───断れないのは、誰も傷つけたくないから。
傷つけた先に何が待っているのか、怖いから。
学校で上手く生活出来なければ、何より、椿さんに心配をかけてしまう。
普段のあのキャラは、全て、彼なりの処世術だったのか。
納得するほど、とてつもなく申し訳ない気持ちになって。
何と声をかけたら良いのかも、永峯君に視線を向けて良いのかも、わからなかった。