西森さんと瑠愛くん。(仮)
バケツもスコップも持たない職人二人は、手だけで形を作ろと試みるが、これがなかなか難しい。
積んではポロポロと崩れる砂に私は何度もやり直し、永峯君はそれを見て声を出して笑った。
そういう永峯君も、私と同じように苦戦している。
競争しようと言ってはみたものの、満足に基礎すら固められないでいた。
「……月葉ちゃんと俺と芽吹ちゃんと、誰が一番上手に出来るか、競争したっけ」
ようやく土台が固まり、次は城を建設すべく、砂を捏ねながらデザインを考えていた彼が呟く。
さっきの私を面白がった笑顔ではなく、昔を懐かしむ、穏やかな笑顔だった。
「やっぱりって言うか、姉さんはさすがに上手だった。もうその頃から、ケーキ屋さんになりたいって言ってた」
四角い居城を思い描いたのか、土台の上にそれらしく、少しずつ砂を盛っていく。