西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
「芽吹ちゃんは、絵を描いて母さんに褒められると、嬉しそうだった。俺は、母さんの髪をいじったり、化粧してあげると喜ぶ、あの顔が好きだった」

 四角い建物の側に、今度は円柱が築かれていく。

「……俺たちは、同性の友達がいなかったから。家で出来る趣味が、どんどん極まっていったんだと思う」

 穏やかな笑顔に、僅かに寂しさを滲ませて、永峯君は手を止めた。

「俺、意外って言われるけど、運動まるっきり出来ないんだ」

 確かに意外で、永峯君より幅のある円柱を築いていた手を、私も止める。

「野球とか、サッカーとか。ルールもほとんど知らない」

 私の円柱にそっと砂を積みながら、彼は目を伏せた。

 同性の友達がいなかった・・・それが理由であると、容易に想像がついた。

「……もう少し明るい話しようって思ったのに。俺って、暗い話ばっかりだね」

 自分を嘲るように、永峯君は口元を歪めた。
 
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