西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
 唐突に砂の城を作ると言い出したのは、そういう事だったのか。

 あまりに想像もつかない過去の話を聞いて、何も言わなくなってしまった私への、彼なりの気遣い。

「………バカね」

 心の中だけで留めておくはずが、つい口に出していた。

 目の前で、永峯君がガーンと音が聞こえそうなほど落ち込む。

「ごめんなさい、違うの」

 何が違うのかはよくわかっていなかったが、謝った。

 このままではチワワが真っ白に燃え尽きて、灰になってしまう。

「暗いとか明るいとか、私は別に、気にしてないから」

 ただ、何と言葉をかけるべきなのか、わからなかっただけ。と付け加える。

「………そうだよね」

 灰になる前に救った彼は、ゆったりと苦笑した。

「………大変だったわね」

 私はそれだけ言って、砂の城の建設に戻った。
 
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